Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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まつかぜのおと

松風の音

和辻 哲郎

Lee 松風の音 (まつかぜのおと) de 和辻 哲郎 (わつじてつろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 1465 caracteres · 3 pantallas

Aozora Bunko

東京の郊外で夏を送っていると、時々松風の音をなつかしく思い起こすことがある。近所にも松の木がないわけではないが、しかし皆小さい庭木で、松籟の爽やかな響きを伝えるような亭々たる大樹は、まずないと言ってよい。それに代わるものは欅の大樹で、戦争以来大分伐り倒されたが、それでもまだ半分ぐらいは残っている。この欅が、少し風のある日には、高い梢の方で一種独特の響きを立てる。しかしそれは松風の音とは大分違う。それをどう言い現わしたらいいか、ちょっと困るが、実際に響きそのものが相当に違っているばかりでなく、それを聞いたときに湧然と起こってくる気分、それに伴う連想などが、全部違っているのである。

響きそのものが違うのは、その響きを立てる松の姿と欅の姿とを比べて見れば解る。直接音に関係のあるのは葉だろうと思うが、松の葉は緑の針のような形で、実際落葉樹の軟らかい葉には針のように突き刺すことができる。葉脈が縦に並んでいて、葉の裏には松の脂が出るらしい白い小さい点が細い白線のように見えている。実際強靭で、また虫に食われることのない強健な葉である。それに比べると、欅の葉は、欅が大木であるに似合わず小さい優しい形で、春芽をふくにも他の落葉樹よりあとから烟るような緑の色で現われて来、秋は他の落葉樹よりも先にあっさりと黄ばんだ葉を落とし