Clásicos japoneses con furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lee 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 111.569 caracteres · 222 pantallas
捨吉はまだ誰にも話さずにあることをこの岡見に引出された。親しい学友同志の間にすら感じられないような深い交渉が、一息にそこから始まって来たような気もした。鎌倉以来二人の間の話頭に上るように成った市川の噂が、その日も出た。捨吉はまだ市川を知らなかった。岡見が出している小さな雑誌の秋季附録で一緒に書いたものを並べたに過ぎなかった。
「市川君という人には是非一度逢って見たい」
「なんなら、私の方から御紹介しましょう。ついこの近くです。本船町に居ます。こいつがまた、なかなか常道を踏まない奴なんです」
市川の話になると、岡見は我を忘れて膝を乗出すようなところがあった。それほど岡見はあの人を贔顧にしていた。
「でも、本船町あたりに面白い人が出来たものですね」と捨吉が言った。
「市川君のラヴの話というのが実に変ってる。面白いことを言出すからね。『僕のラヴアはもう死んで、この世には居ない』なんて。そうかと思うと、何時の間にかそいつがまだ生きている――私はよく弟にそう言うんです。市川という男は、あれは点火をして歩く奴だ。どうもあの男は諸方へ火を点けて歩いて困る」
こう話し聞かせる岡見は、人の心に火を点けて歩くという若者の様子を手真似にまでして見せて、笑った。