Clásicos japoneses con furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lee 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 154.788 caracteres · 299 pantallas
そしてそう決心した瞬間、私はさっきから沸きたぎっていた憎悪と憤怒激昂が水でもかけられたように落ち付いて、一時に胸に涼風の吹き込んでくるような気持を感じたのであった。いわばさっきまで私にはまだ判然たる殺意というものがなく、ただ夢遊病者のごとくに拳銃を装填したりポケットに忍ばせてみたにすぎなかったのであろうが、この瞬間ベナビデスと妻とに対する完全なる殺意を生じたのであった。そして殺意を生じると同時に激憤していた気持が、一時に納まって何とも言えぬ一種の冷徹な爽涼感を、その中に見出してきたような気持であった。
しかもその爽涼感たるや、何というかつて世にありとしも、私の知らなかった楽しさ限りなきものであったろうか。もはやそこには己を屈せしむべき何ものもなければ、忍辱すべき何ものすらもない。卑屈も要らなければ、己を曲げてまで人に頭を下ぐべき何ものもない。人に厭わるる人間が強いて人から厭われまいとして、人間の仲間入りをして社会の羈絆の中に暮そうと思えばこそ、そこには粉飾もあれば粉黛もあり、恥もあれば忍辱もあり、私の四十何年の憂鬱至極な生活の鬱積があり、感情の跼蹐があった。