Clásicos japoneses con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lee 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 159.223 caracteres · 320 pantallas
」
「…………」
「ほんとに、どうしたのよっ。」
春子は、めすらしく真剣に怒っているような声を出した。すると次郎は、それとはまるで無関係のように、真面目な顔をして、だしぬけにたずねた。
「姉ちゃんは、東京に行くの?」
「あらっ。」
春子の顔は、瞬間に真赧になった。そしてすぐ竜一の方を見ながら、
「竜ちゃん、もう喋ったのね。いいわ、もうこれからなんにも上げないから。」
春子は菓子の包みをひったくるようにして、さっさと下に降りて行ってしまった。
竜一と次郎とは、ぽかんとして顔を見合わせた。しかし次の瞬間には、次郎はもうそわそわし出した。彼は、幾日かの後に失わるべき春子が、すでに彼から全く姿を消してしまったように思った。そして何よりも彼をうろたえさせたのは、春子を怒らしてしまったことであった。
竜一は、しかし、憤慨した。
「馬鹿にしてらあ。東京に行くの大喜びのくせに。……お菓子くれなきゃ、くれないでいいや。僕とって来るから。」
そう言って竜一はすぐ下に行った。
次郎はいよいようろたえた。彼は竜一が菓子をもって再びやって来るのを待っている気がしなかった。で、自分もすぐ下におりて、足音を忍ばせながら、大急ぎで外に出てしまった。