Clásicos japoneses con furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lee 灰色の記憶 (はいいろのきおく) de 久坂 葉子 (くさかようこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 65.588 caracteres · 132 pantallas
霊魂を信じなければと私は思っていた。私は自分の死体の中から離れてゆくものを想像した。それは、まっ黒のたどんによく似たものであった。水晶のように光り輝いている魂ではなかった。私は必死になって念仏を唱えながら、そのたどんの黒さがうすらんで来、だんだん透明になるような気がして来た。私はひるまず、「ナンマンダブ」をとなえた。ふっと我にかえった時、あたりは静かになって来ていた。飛行機は去り、炸裂音も、その間隔がだんだん長くなって、思い出したように、あちこちで鋭い音を発し、わずかな震動が身体にひびいた。
私は死からまぬがれたことを知った。私は念仏を中止した。その日、私達の家族はちりぢりになって二、三人ずつ人の家に泊った。私は体の節々の痛みを忘れてぐっすり眠りつづけた。
翌日、やっと一軒の疎開後の空屋に父母姉妹と叔母家族と一しょに移り住んだ。七人の遠い親類は田舎の方へ別れて行った。空虚な生活がはじまった。一週間、言葉を発することも厭うようにお互に顔をみるだけでいた。姉も弟も従姉も病気になった。疲労と極度の恐怖から食事をすることも出来ない有様であった。ソ聯が反対側に加わり、原子爆弾が広島と長崎に落ち、そして敗戦の日が来た。