Clásicos japoneses con furigana
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ちちのかたみ
父の形見
豊島 与志雄
Lee 父の形見 (ちちのかたみ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 6879 caracteres · 14 pantallas
そんな詩を父は好きだった。中学校の教科書の中でそれらの詩に出会った時、君は果してどんな感懐を覚えたか。
父の吟咏の調子は、自己流の怪しげなものだった。然し、空には星が実にきれいに光っている。池には蓮の葉が青々と重畳して、点々として白い花が咲き匂っている。対岸の賑やかな料亭の灯が、遠く、港町のような旅情をそそる。それらのものの中に君の心は溺れながら、またうとうとと眠りかける。山の上の森の中から鐘の音が響いてきても、君はもう眼をさまさない。すると、父の大きな力強い掌が、君の頭にどしんとかぶさる。君はびっくりして、慴えたように飛び起き、父にすがりつく。父は威厳のある眼で母親のように微笑んでいた。蚊にさされたあとが急に痒くなるのだった。
それらの夕の散歩は、落魄した父と孤独な君にとっては、一の慰安だったろう。父にとっては酒の酔と異る陶酔があり、君にとっては酒の酔に似た感傷があったろう。そしてその思い出は、君の身内に長く生きている。然し、そういう思い出こそ、投げ捨ててしまわなければいけないものなのだ。
正夫よ、君の父はほんとに自殺の決心をしたことがあった。