Clásicos japoneses con furigana
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きつね
狐
永井 荷風
Lee 狐 (きつね) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9770 caracteres · 20 pantallas
こんな事をば、出入の按摩の久斎だの、魚屋の吉だの、鳶の清五郎だのが、台所へ来ては交る交る話をして行ったが、然し、私には殆ど何等の感想をも与えない。私は唯だ来春、正月でなければ遊びに来ない、父が役所の小使勘三郎の爺やと、九紋龍の二枚半へうなりを付けて上げたいものだ。お正月に風が吹けばよいと、そんな事ばかり思って居た。けれども、出入りの八百屋の御用聞き春公と、家の仲働お玉と云うのが何時か知ら密通して居て、或夜、衣類を脊負い、男女手を取って、裏門の板塀を越して馳落ちしようとした処を、書生の田崎が見付けて取押えたので、お玉は住吉町の親元へ帰されると云う大騒ぎだけは、何の事か解らずなりに、然し私は大変な事だと感じた。お玉が泣きながら、白髪の母親に手を引かれ、裏門をくぐって行く後姿は、何となく私の目にも哀れであった。此れ以来、私には何だか田崎と云う書生が、恐いような、憎いような気がして、あれはお父さんのお気に入りで、僕等だの、お母さんなどには悪い事をする奴であるように感じられてならなかった。
正月一ぱい、私は紙鳶を上げてばかり遊び暮した。学校のない日曜日には、殊更に朝早く起出て、冬の日の長からぬ事を恨んだが、二月になって或る日曜日の朝は、そのかいもなく雪であった。