Clásicos japoneses con furigana
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しらねのふもと
白峰の麓
大下 藤次郎
Lee 白峰の麓 (しらねのふもと) de 大下 藤次郎 (おおしたとうじろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.238 caracteres · 45 pantallas
人通りもあるまいと、道の真中に腰を下した。落葉松の新緑の美しいことは、かつて軽井沢のほとりで見て知っている。秋の色としては、富士の裾野に、または今度の旅でも鰍沢の近くで、その淋しげな黄葉を床しいと思った。しかし私が、今眼前に見るような、こんな鮮かな色があろうとは思い及ばなかった。植物として私の最も好む山百合、豌豆の花、白樺、石楠花のほかに、私は落葉松という一つの喬木を、この時より加えることにした。
一時間ほど筆を走らせて更に上流へと歩を進めた。五、六丁にして道は左の沢に入る。ここで早川の本流と別れて、この沢に沿うてなお深く入り込む、岸が尽きて危うき梯子を懸けたところもある。渓の上にただ一本の木を橋に渡したところもある。かかる山懐ろにも焼畑はあって、憐れげな豆や粟が作られている。そのまた奥には下駄を造る小屋もある。山人の生活は労多きものである。
往けども往けども白河内の山は見えない。あの高きところへ上ればと、汗ぬぐいつつ辿りつけば、更に木立深き前山が、押冠さるように近々と横たわっている。道も漸く覚束なく、終には草ばかりになってしまう、帰りの時間も気遣われる、足も痛み出した、山の見えぬのは残念だが終に引返すことにした。