Clásicos japoneses con furigana
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やのしのとい
矢押の樋
山本 周五郎
Lee 矢押の樋 (やのしのとい) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 14.468 caracteres · 29 pantallas
八
「……矢押どの」
重太夫は燃えるような眼で、梶之助の顔を見上げた。……二人は暫く互いの眼と眼を見合せていたが、やがて重太夫は呻くように云った。
「後の事は引受けましたぞ」
八
「どうあそばしました」
その夜である。……突然訪ねて来た梶之助の表情を見て、出迎えた吉井幸兵衛ははっと胸を衝かれた。
「いけなかった」
「矢張り、そうでございましたか」
「それで別れに来た」
馬を飛ばして来た梶之助は、片手に持った樋をぐっと突出しながら、然し眉宇には微笑さえたたえて云った。
「幸兵衛どのは直ぐに人数を集め、樋掛けの用意をして馬場上まで出て貰いたい」
「……承知致しました」
梶之助がなにをしようとしているか、幸兵衛には分り過ぎるほど分った。
「誰にも迷惑は掛けぬ、始末は拙者が引受けるから、安心して仕事に掛るよう皆に伝えて呉れ、あとの事は勘定奉行が旨くやる。……では急ぐからこれで」
「お待ち下さいまし」
直に去ろうとする梶之助を、幸兵衛は縋りつくように呼止めた。
「是からお働きなさるのにいい物がございます、お手間はとらせません、ひと口召上っておいで下さいまし」
「……うん」
幸兵衛の眼を見て、梶之助は苦しそうに頷いた。