Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lee 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 246.214 caracteres · 495 pantallas

Aozora Bunko

「あ。私ですか」

彼女は、ためらった。が、遂に思い切った容子で。

「藤夜叉といいまする」

「……え、藤夜叉」

「はい」

「とうからお名は聞いていたような。たしか、鎌倉表で」

「ええ。今は一色村に来ております。けれど、ゆめ、世間に知られてはなりません。日蔭の身です。どうぞ。誰へもいうてくださいますな」

もう彼女は、市女笠を持って、立ちかけている。――茶屋の軒ばの、御厨ノ伝次も、羽鳥、今切の二人も、まだ何ら気づいてはいない様子だった。

「……ネ、覚一さま。お気づよう自身を支えていらっしゃいませ。今夜だけを、じっと、暴風雨の下にいる夜と思って」

言い残すと、そこからすぐ渓川道へ降りて、鵯のごとく、その迅い影を、沢づたいに消してしまった。

まもなく、従者の三名も、

「いざ、ぼつぼつまいりましょうかな。秋の短か日、追われるようでございましょうが」

と、うながして来て、一同、山茶屋の軒を離れたが、歩き出すとすぐ今切藤五は、きょろきょろし出した。

「おや、尼前さま。市女笠の女はどこへ行きましたか」

「建部の社に知り人がいるとかで、先に別れてゆきました」

「妙な女もあったもの……」