Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lee 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 229.324 caracteres · 458 pantallas

Aozora Bunko

「…………」

「行くところまで行く世の波は断れぬ。あわれな奴だ。鎌倉の飼犬でなくば、ゆくすえ禁門の一将ともしてとらせんに、不愍や、こんな小島で朽ち終るか」

「ご親切に」

能登は鼻皺をよせて嘲った。

「仰せを聞けば、いつかまた万乗の位に還るお夢でもごらんのようだが、まずそのような煩悩は、さらりとお忘れあった方がよろしゅうござろう」

「そうかの」

帝は柔軟である。微笑されて、

「しかし儂が還るまいとしても、いつかはきっと迎えが来る。大挙、宮方の軍勢がこれへの」

「わはははは」

能登は鮪の血あいみたいな唇を反らして帝に酬いた。

「さようさよう。そんなお夢をみつつ、ここの松風波音を友に、まずはお独りを慰めているがいい。ならば無事と申すもの」

「そのうち必然に、北条幕府は亡び去る。能登っ、そちには信じられまいがの」

「…………」

「信じられまい」

「…………」

「むりはない。こんな島にいては、井の中の蛙だ、わからぬはずよ。だが今日もひろい本土の空の下では、いたるところの山河が矢叫びや武者吠えあげて、はや羽蟻の巣にひとしい幕府の古屋台をゆすぶっている。どうッと地鳴りが響いたら一朝のまに鎌倉の大廈は世にあるまい」