Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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はしがき

童話集 春

竹久 夢二

Lee 童話集 春 (はしがき) de 竹久 夢二 (たけひさゆめじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 43.531 caracteres · 97 pantallas

Aozora Bunko

父のボートは暗い波と烈しい風とに揉まれ乍ら、濃霧の中を進んだ。やがて、船の最後と思われる非常汽笛の音をたよりに、つかれた腕に全力をこめて、ボートをやった。行って見ると、船の破片にすがった半死の人が五人だけ見えた。

一人一人ボートへ助け入れたが、どの人も口を利くどころか、眼さえ見えぬようであった。ボートの舳を返して燈台の方へ漕いだが、霧は愈深くなり、海はますます暗くなり、ともすれば暗礁に乗り上げそうであった。半死の人を乗せたボートの重みと、労れ切った腕にとったオールは、とかく波にさらわれ勝であった。

ここに燈台の櫓では、父のため、多くの難船した人のため、摩耶はあらん限りの力で霧笛を吹いた。

しかし今年十二の少年の力では容易でない。忽ちへとへとに労れてしまって、霧笛の音は、とぎれとぎれになった。

しかしいま吹きやめたら、父はどんなに困るかも知れぬ。そう思うと死んでも止められない。ポーと吹いては休み、ブウと吹いては休んだ。しかし父のためだ! 多くの人人のためだ! それでこそ日本男児だ! 吹く吹く、死んでも吹く……

また海の上では、かすかながらも鳴っている霧笛の音を聞いては、父は新しい力を腕にこめて、ボートを漕いだ。