Clásicos japoneses con furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lee 細雪 (ささめゆき) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 194.628 caracteres · 371 pantallas
―――娘の時分に東京へ来ると、いつもお父さんが此処へ連れて来やはってん」
「蒟蒻嶋云うて、此処は嶋になってるのん?」
「さあ、どうやろか。―――たしか前には、こんな川附きの座敷はなかったような気イするけど、場所は此処に違いないわ。―――」
幸子もそう云って障子の外に眼を遣った。昔父と来た時分には、この河岸通りは片側町になっていたのに、今では川沿いの方にも家が建ち、大黒屋は道路を中に挟んで、向う側の母屋から、川附きの座敷の方へ料理を運ぶようになっているらしかったが、昔よりも今のこの座敷の眺めの方が、一層大阪の感じに近い。と云うのは、座敷は川が鍵の手に曲っている石崖の上に建っていて、その鍵の手の角のところへ、別に又二筋の川が十の字を描くように集って来ているのが、障子の内にすわっていると、四つ橋辺の牡蠣船から見る景色を思い出させるのである。そして此処でも、その十文字の川から川へ、四つは架っていないけれども、三つは橋が架っていた。ただ惜しいことに、江戸時代からあるらしいこのあたりの下町も、震災前には大阪の長堀辺に似た、古い街に共通な落ち着きがあったものだけれども、今では人家も橋梁も鋪装道路も皆新しくなり、而もそのわりに人通りが閑散で、何となく新開地の気分がするのであった。