Clásicos japoneses con furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lee 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 19.483 caracteres · 41 pantallas
細君が生きていた頃は、送って来る為替や小切手など、細君がちゃんと払出を受けていたのだが、細君が死んで、六十八歳の文盲の家政婦と二人で暮すようになると、もう為替や小切手などいつまでも放ったらかしである。
近所に郵便局があるので、取りに行けばよさそうなものだし、自分で行くのが面倒だったら、家政婦に行かせばよさそうなものだのに、為替に住所姓名を書いて印を押すのが面倒な上に、家政婦に郵便局へ行ってくれと頼むのが既に面倒くさいのだ。一つには、毎夜徹夜同然な生活をしているので、起きて食事を済まして、煙草を吸っているうちに、もう郵便局の時間がたってしまう。前の晩に頼めばいいというものの、彼は仕事に夢中でそんなことは忘れている。では、昼間食事の時に頼めばよいということになるが、茶の間にはペンがない。二階の書斎まで取りに行くのが面倒くさい。取りに上らせようと思っているうちに、もう忘れてしまう。
それでも、さすがに金がなくなって来ると、あわてて家政婦に行かせるのだが、しかし、払出局が指定されていて、その局が遠方にある時は、もう家政婦の手には負えない。六十八歳、文盲、電車にも一人で乗れないという女である。