Clásicos japoneses con furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lee 菊千代抄 (きくちよしょう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 36.178 caracteres · 72 pantallas
父の訪ねて来る回数はずっと減った。月に二度はたいてい来るが来ないときもあった。そのころ父は若年寄から老中になっていた。
「侍女を使ったらどうだ。これではあまり殺風景ではないか」
「いいえ侍女はいりません、松尾で用が足りますから」
「しかし少しはうるおいがないといけない、ここはまるで僧坊のようにみえる」
従前どおり来ると酒を出し、菊千代と膳を並べて飲みながら話すが、父は昔のように楽しそうではなく、ふとすると菊千代の姿から眼をそらすようにした。
――自分のおとこ姿がお気に召さないのだ。それは疑う余地がないと思った。すると強い反抗心が起こった。自分をこのようにしたのは父ではないか、初めから理由を知らせて呉れたのならともかく、十五までなにも教えず、男であることに些かの疑いももたなかった者に、いきなり女になることができるであろうか。そのうえ、男で一生くらすのもよかろうと、父が自らすすめたのではないか。
「分封して頂けるのはいつのことでございますか」
反抗心が起こると菊千代はよくこう云った。
「まだ分封しては頂けないのですか」
貞良は明らかに迷いだしたようだ。そう簡単にはゆかぬとか、考えているとか、もう暫く待てとか、なかなかはっきりした返辞はしなかった。