Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
「寒いから部屋を煖めます」と云ったなり、上から煖炉の中を見下した。火は薄い水飴の色に燃える。藍と紫が折々は思い出したように交って煙突の裏へ上って行く。
「まあ御あたんなさい」
折から風に誘われた雨が四五筋、窓硝子に当って砕けた。
「降り出しましたね」
母は返事をせずに三足ほど部屋の中に進んで来た。すかすように欽吾を見て、
「寒ければ、石炭を焼かせようか」と云った。
めらめらと燃えた火は、揺ぐ紫の舌の立ち騰る後から、ぱっと一度に消えた。煖炉の中は真黒である。
「もうたくさんです。もう消えました」
云い終った欽吾は、煖炉に背中を向けた。時に亡父の眼玉が壁の上からぴかりと落ちて来た。雨の音がざあっとする。
「おやおや、手紙が大変散らばって――みんな要らないのかい」
欽吾は床の上を眺めた。裂き棄てた書面は見事に乱れている。あるいは二三行、あるいは五六行、はなはだしいのは一行の半分で引き千切ったのがある。
「みんな要りません」
「それじゃ、ちっと片づけよう。紙屑籠はどこにあるの」
欽吾は答えなかった。母は机の下を覗き込む。西洋流の籃製の屑籠が、足掛の向に仄に見える。母は屈んで手を伸した。