Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
横たえた竿は取り直されて、肩より高く両の手が揚がると共に舟はぐうと廻った。この獣奴と突き離す竿の先から、岩の裾を尺も余さず斜めに滑って、舟は向うへ落ち出した。
「どうしても夢窓国師より上等だ」と宗近君は落ちながら云う。
急灘を落ち尽すと向から空舟が上ってくる。竿も使わねば、櫂は無論の事である。岩角に突っ張った懸命の拳を収めて、肩から斜めに目暗縞を掠めた細引縄に、長々と谷間伝いを根限り戻り舟を牽いて来る。水行くほかに尺寸の余地だに見出しがたき岸辺を、石に飛び、岩に這うて、穿く草鞋の滅り込むまで腰を前に折る。だらりと下げた両の手は塞かれて注ぐ渦の中に指先を浸すばかりである。うんと踏ん張る幾世の金剛力に、岩は自然と擦り減って、引き懸けて行く足の裏を、安々と受ける段々もある。長い竹をここ、かしこと、岩の上に渡したのは、牽綱をわが勢に逆わぬほどに、疾く滑らすための策と云う。
「少しは穏かになったね」と甲野さんは左右の岸に眼を放つ。踏む角も見えぬ切っ立った山の遥かの上に、鉈の音が丁々とする。黒い影は空高く動く。
「まるで猿だ」と宗近君は咽喉仏を突き出して峰を見上げた。