Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

Lee 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 88.970 caracteres · 176 pantallas

Aozora Bunko

栞の眼に涙が溢れていた。しかしその涙は、さっき、父親や、自分の家の不幸のために泣いた涙とは違い、歓喜と希望と愛情とに充ちた涙であった。栞の頬は夜眼にも著く赤味注していた。頼母は、何が栞をそうまで感動させたのか解らなかった。手と手と触れ合ったことなど、彼は、気がつかなかったほどである。それほど彼は無邪気なのであった。しかし、栞の感動が、自分を愛してのそれであるということは直覚された。このことが今度は彼を感動させた。

(この娘がわしを!)

その娘は、自分にとっては命の恩人と云えた。この娘の介抱がなかったら、自分は今朝死んでいたかもしれない!

(この娘がわしを!)

頼母の心へ感謝の念が、新たに強く湧き、それと一緒に、愛情がヒタヒタと寄せて来るのを覚えた。

立ち尽くし、見詰め合っている二人の頭上には、練り絹に包まれたような朧ろの月がかかってい、その下辺を、帰雁の一連が通っていた。花吹雪が、二人の身を巡った。

「勘兵衛!」と、不意に老人が叫んだ。「天国の剣を奪ったのも汝の筈じゃ! それをこの身に!」

(天国?)と、頼母は、ヒヤリとし、恍惚の境いから醒めた。

(この老人も、天国のことを云う!)