Clásicos japoneses con furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lee 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 67.486 caracteres · 144 pantallas
暑くない夏
「……夏が来たのね」
女は、天井を見上げたままでいった。
白い天井。白い壁。白いシーツ。女の顔も白い。
「空を見ていると、わかるの。ついこないだまで、どんよりと空の濁った日ばかりがつづいてたわ。まるで、水に落ちたケント紙のような色の空だったわ。……それが、見てごらんなさい、あんな真青な色になって、むくむくした力こぶみたいな雲が見えるわ」
女は声を落し、彼に笑いかけた。
「もう、一年になるのね」
うなずいて、彼も窓を見やった。窓の外は、一面に濃い群青の夏の空だ。――この部屋は五階だ。なるほど、ベッドに寝たきりでいるのだったら、見えるのは空しかない。
「学校の話をしようか?」
二人は、大学のクラス・メートだった。が、女はちがう返事をした。
「お願い。窓のカーテンを閉めて」
彼はカーテンを引いた。女は、大きな呼吸をした。ふざけたような声でいった。
「……私には、もう、夏も冬もないの。私はもう、なにも感じないわ。暑くも寒くもなく、いつも気密室に入っているみたいなのよ。みんな、他人の夏、他人の冬でしかないの」
何万人、いや、何百万人に一人という奇病だった。去年の夏、突然高熱を発した二十歳の彼女は、そのまま全身が動かなくなった。