Clásicos japoneses con furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lee 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) de 尾崎 士郎 (おざきしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 12.182 caracteres · 24 pantallas
仄あかるい空の下に、若葉の色がキラキラと光って見える。うす靄に掩われた青田のみずみずしさが眼に沁みるようであった。歩きながら、私は何ものかに感謝しないではいられないような気持になってきた。天地万象が明るく、ゆたかなものにつつまれている。赤ん坊が生れるということさえ不思議であるのに、女の子だときめつけられていた胎児が男であったということは、ますます意外であった。天が私の追放を憐んで、赤ん坊の生れ出る寸前に男と女とをすり変えてしまったのではなかろうか。そんな気持がどこからともなくこみあげてきたほどである。
F病院の二階にも電燈があかあかと輝いている。私は手術着のF博士に会った。
「坊っちゃんで結構でした、非常な安産でしたから御安心下さい」
看護婦の顔も家政婦の顔も、あかるく輝いていた。妻は心持ち首を左に傾けたまま、かすかな寝息を立てて眠っていたが、その横に、産れ出る女の赤ん坊のために用意してつくった友禅模様の小さい蒲団が敷いてあって、その中には、生れたばかりの男の赤ん坊が、これも真っ赤な着物を着て、しきりに口をもぐつかせながらジタバタやっている。その頭の上でゆれている絹のようなうす毛を、じっと見つめているうちに私は涙がこみあげてきた。