Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Lee 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) de 酒井 嘉七 (さかいかしち) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 13.471 caracteres · 28 pantallas
私は大川の中洲を、この深い靄の中を散歩していた。自分はもう何もこの世に執着はない。生死を超越した悟り切った心境にある。赤沢荘三郎の亡霊が(そうしたものが実在すると、私の信念をまげて仮定しての話であるが)私の贖罪を要求し、私の地上からの消滅を希望するならば、私は嬉んで彼の望みに応じる用意がある。しかし、私はいま少しの時間がほしい。――私の研究は、もう程なく完成する。
自分が赤沢荘三郎を殺害したことは、たといそれが幾多の人間を助けることを意味したとしても、自分の貸借対照表の借方の側には、その行為が、大きく「負債」として記されている。私は自分の命が終るまでに、これをバランスさせるだけの「資産」――世の人のためになる「資産」を作り、それを対照表の貸方の側に新しく記人し、貸借を平均させておかねばならない。それがために、いま少しの時間が必要なのだ。
今ごろ人のいそうにない、この大川の中洲の向うから大股で歩いて来る人間がある。気づいて、はッとした瞬間彼はもう目の前にいた。私の前に立ちはだかるように立ち止って私の面を真正面から凝視している。赤沢荘三郎である。一瞬、冷いものが私の背筋を走った。