Clásicos japoneses con furigana
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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
Lee 陰獣 (いんじゅう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 66.968 caracteres · 131 pantallas
私は根岸御行の松のほとりに、一軒の古めかしい土蔵つきの家を借り受け、留守は近所の駄菓子屋のお婆さんに頼んで置いて、静子としめし合せては、多くは昼日中、そこへ落合ったのである。私は恐らく初めて、女というものの情熱の烈しさを、すさまじさを、しみじみと味った。ある時は、静子と私とは、幼い子供に返って、古ぼけた化物屋敷の様に広い家の中を、猟犬の様に舌を出して、ハッハッと肩で息をしながら、もつれ合って駈け廻った。私が掴もうとすると、彼女はいるかみたいに身をくねらせて、巧みに私の手の中をすり抜けては走った。グッタリと死んだ様に折重なって倒れてしまうまで、私達は息を限りに走り廻った。ある時は、薄暗い土蔵の中にとじ籠って一時間も二時間も静まり返っていた。若し人あって、その土蔵の入口に耳をすましていたならば、中からさも悲しげな女のすすり泣きに混って、二重唱の様に、太い男の手離しの泣き声が、長い間続いているのを聞いたであろう。
だが、ある日、静子が芍薬の大きな花束の中に隠して、例の六郎氏常用の外国製乗馬鞭を持って来た時には、私は何だか怖くさえなった。彼女はそれを私の手に握らせて、六郎氏の様に彼女のはだかの肉体を、打擲せよと迫るのだ。