Clásicos japoneses con furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lee 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 145.414 caracteres · 289 pantallas
九
それに加えて、お千代は若い時分から誰彼にかぎらず男には好かれていたという単純な自惚を持っている。船堀の家にいた時分には近処の若いものにちやほやされた。屋敷奉公に出れば書生にからかわれ、派出婦になれば行った先々で折々主人に挑まれた。それをお千代は侮辱だとは思わず、自分は男に好かれる何物かを持っているがためだと考えていた。この何物かは年と共に接触する男の数が多くなるに従って、だんだんはっきりと意識せられ、内心ますます得意を感じる。自分は重吉に愛されている。そのように他の男からもまた愛されるに違いないと極めて簡単に考えているので、来年はもう三十三という年齢さえも忘れたように、唯ふわふわと日を送ることが出来るのであった。
九
重吉が麻布谷町の郵便局から貯金を引出して帰って来たその日、お千代は稼ぎに出たまま夜ふけになっても帰って来なかった。泊ることは珍らしくないので、その夜は別に心配もせず、重吉はいつものように、折々独寐する晩をばかえって不断の疲労を休める時として、あくまで眠りを貪るのであった。しかし翌日、暮れ方近くなってもお千代はまだ帰って来ず、電話もかけて来ない。