Clásicos japoneses con furigana
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あめ
雨
織田 作之助
Lee 雨 (あめ) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 30.421 caracteres · 60 pantallas
連れ子のあることは、安二郎に子供の出来ないことを見越して、あらかじめ勘定にはいっていた。お兼は放蕩者の安二郎には自分の子を養子にくれてやる気はしなかったのである。しかし、お君の連れ子の豹一がしっかり者であれば、娘の中で、一番きりょうの悪いのを嫁にやってもいゝと考えていた。守蔵は既に十万円を定期貯蓄で預けていた。話が纏まると直ぐ婚礼が行われた。後年成長した豹一が毎年木犀の花が匂う頃になると、かっと血が燃えて来るような想いで頭に浮んで来る冬を想わすような寒い秋の日であった。
そのとき、豹一は八つ、学校から帰るといきなり、仕立て下ろしの久留米の綿入を着せられた。筒っ包の袖に鼻をつけると、新しい紺の香が冷え/″\とした空気と一緒にすっと鼻の穴にはいって来て、気取りやの彼にはうれしい晴衣であったが、さすがに有頂天にはなれなかった。仕付糸をとってやりながら、向う様へ行ったら行儀ようするんやぜと母親は常に変らぬ調子でいうのだが、何か叱られているように思った。いつになく厚化粧の母の顔を子供心にも美しいと見るのだが、しかし、なぜかうなずけない気持だった。路次の入口に人力車が三台来て並ぶと、その顔は瞬間面のようにとりつくろい、子供の分別ながら豹一はそれを二十六才の花嫁の顔と察し、何かとりつく島の無い気がした。