Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lee 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 12.494 caracteres · 26 pantallas

Aozora Bunko

さすが五百人もの輩下をつかう藤波のすることだけあって、大広蓋に香道具やら香木、煉香、髪油にいたるまで、ひとつも洩れなく山ほどに積みあげて持ちこんで来た。

顎十郎は、うやうやしく受けとって、

「これは、早速の御配慮、まことにかたじけのうございます。……では、これから早速に香聴きにかかりますが、これはいかようにも静思を要する仕事。一刻ほどのあいだ、この界隈で物音をお立てなさらぬよう、静謐にお願いいたします」

「いかにも承知した。このあたりにひと気をなくしておくから、あいすんだら手を拍つように」

「かしこまりました」

それで藤波は出て行く。

後にはひとり、顎十郎。……今度こそ本式に端坐しなおすと、急にひきしまった顔で香炉を引きよせ、埋火の上に銀葉をのせ、香づつみをひらいて香を正しく銀葉のまんなかにのせ、香炉を右にとり、左に持ちかえ、右手でその上をおおって型通りに香を聴きはじめた。

顎十郎の眉のあたりに、なんともいえぬ静かな色が流れる。半眼にして、ひとつ聴きおわると、また次の香づつみをひらく。こんなふうにして次々と五十八種の香木を聴いて行ったが、たずねる匂いはその中にはない。