Clásicos japoneses con furigana
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さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Lee 魚の序文 (さかなのじょぶん) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 10.384 caracteres · 21 pantallas
「君が、僕の背中ばかり見ているからさ、さア、先になって行ってごらん、厭でも美しい景色が見えるから……」
彼女を先へ歩かせると、今度は僕の方がたまらなかった。赤緒の下駄と云えば、馬糞のようにチビた奴をはいている。だが、雑巾をよくあててあるらしく古びた割合に木目が透きとおっていた。
「唄でもうたわない?」
「ええ……唱歌なんてもの皆忘れてしまった……こんな時唄う歌なんてむずかしいわねえ」
僕達は小川の上のやや丘になった灌木の下に足を投げ出して二人が知っている「古里」の唄をうたい始めた。
雲雀が高く上っている。若葉が風にまるでほどけて行くようであった。僕は眠たくなって、ゴロリと横になると、帽子を顔にかぶせて眼をとじた。瞼の部屋の中は真暗だが、渦のような七色のものがくるくる舞っている。僕のそばから離れて行ったのか、彼女が柔い草を踏んで向うへ遠ざかるのが頭へ響いて来た。
「オイ、あんまり遠くに行っちゃア駄目だよ」
帽子の中からそう云ったまましばらく、僕はうたたねしてしまったらしい。――ふと眼が覚めると彼女は、遠くの合歓の花の下で、紅の帯をといて、小川の水で顔や手足を洗っていた。