Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 262.100 caracteres · 523 pantallas
それには、よほど、細かい気配りをしているとみえ、風呂へ入るにも、人なき時をえらび、酒に熟睡している時でも、頭巾へ他人の指がふれると、かッと眼を開く――というかげ口を、ぬきやの三次もいっていたことがある。
「では何か、二刻ほどまえに、時雨堂への道をきいて、関の山へ参ったのだな。よし。それでは、このまま帰るまい、払いは女中へ渡しておいたぞ」
宿の男へ、こういって、お十夜孫兵衛はそとへ出た。
空を見あげると、一面に、まッ黒なちぎれ雲――逢坂山の肩だけに、パッと明るい陽がみえるが、四明の峰も、志賀粟津の里も、雨を待つような、灰色の黄昏ぐもり。
孫兵衛の姿は、明神の麓から、竹林の中へ消えた。とまた、だらだら上りの中腹に影がみえ、やがて、左へうねった檜林の細道へ入る……。
誰か、人でも踏んで行ったらしく、草の寝ている跡がある。と――お十夜の足もとへ、ふわりと、何か柔らかに絡みついた物がある。赤い絹のしごきである。もしや、と思ったが、お綱のものとは柄がちがっていた。
何だ――という顔つきで、孫兵衛はそれを捨てて、またピタピタと林をぬけて行くと、目の前、パッと夕陽が明るく展けて、かなり高い崖際の上へ出た。