Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 262.100 caracteres · 523 pantallas
「おお……」
門柱の蔭にすがって、弦之丞は、駕から奥へ連れられてゆく、痛ましい人の姿を見送っていたが、やがて、両眼へ掌を当てたまま、鼠甲斐絹のかげ寒く、代々木の原を走っていた。
弦之丞は、今朝、起きるとすぐに机に向っていた。
何であろうか、わき目もふらず、奉書七、八枚に達筆を走らせ、草し終ると、二重に厳封して、封の表に太く強く、「上」と書いて机にのせ、しばらく腕をくんでいた。
これでよかろう――というふうに、やがて次の部屋に向いて、
「万吉。用事がなかったら、ちょッとここへまいってくれぬか」
「へい」というと襖が開いた。炉べりに砥の粉と紅殻と十手が置き放してある。暇にあかして磨きをかけていたのだろう、十手が燦然と光ってみえる。
「何か御用でございますか」
「ウム」といって、机の上の奉書封じを取りあげたが、ふと次の部屋を覗いて、
「お綱は?」と、万吉の顔を見た。
「何を思いだしたか、今朝は朝飯も食べずに、妻恋の家を畳んでくるのだといって出て行きましたが」
「どうも解せぬ女ではある」
「わっしには、少しばかり、お綱の心が分っております。だが、それをこうとは、あなたへいえない話なんで……。