Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 56.957 caracteres · 114 pantallas
静中の動、なんらかの力がそこに鬱している。
だが――山は静かだ。
鬼気をひそめて静かである。
ところが、ここに不思議な現象が起こりだした。といっても、世間の巷とは違うから、そう大した異変ではないが、この山としては少なくもひとつの変った現象には相違ない。
それは何かというと、あれ以来、世阿弥の様子がにわかに生々としてきたことだ。かれは、竹屋三位の小柄が自分の太股に深く突き刺さったにもかかわらず、山牢の前へ這い戻って、ニヤリと、十一年目といってもいい独り笑みを洩らしたのである。
「初めて知った……。ウーム、この山には、自分の他に、まだ一人の同志がいる……。何といったっけ、オオ俵一八郎、俵一八郎、かれはたしかに大阪表の天満組同心だ。あの様子では、ごく近ごろに、この山牢へ送りこまれてきたらしいから、さだめし、その後の消息に通じているだろう。なんとかして、あの一八郎と一度話をしてみたいものだ」
こういう希望が燃えだしたのである。希望は生命の火のようなものだ。希望のうすれる時には人は老い、希望の赫々とする時には人は若やいでくる。
世阿弥は小柄の傷を癒すために毎日、薬草の葉をムシっては、青い草汁を傷口へなすりこんだ、そして柵から脱けうる方法と場所に苦しんでいた。