Clásicos japoneses con furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lee 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 37.256 caracteres · 77 pantallas
万々一非常に不幸な場合になったとしても近世文明の精神と世界国際の関係とは独り一国をして斯の如き悲境に立至らしめる事はあるまいと云うような気がした。基督教の信仰と羅馬以降の法律の精神にはまだまだ憑拠するに足るべき力があるもののように思いなしていたのだ。いかに戦争だとて人と生れたからには此の度独逸人が白耳義に於てなしたような罪悪を敢てし得るものではないと思っていたのだ。つまりわたしは号外を見て感激したけれど、然し直に父母の身の上を憂うる程切迫した感情を抱かなかったのである。ましてや報道は悉く勝利である。戦捷の余栄はわたしの身を長く安らかに異郷の天地に遊ばせてくれたので、わたしは三十八年の真夏東京市の市民がいかにして市内の警察署と基督教の教会を焼いたか、又巡査がいかにして市民を斬ったか其等の事は全く知らずに年を過した。
明治四十四年慶應義塾に通勤する頃、わたしはその道すがら折々市ヶ谷の通で囚人馬車が五六台も引続いて日比谷の裁判所の方へ走って行くのを見た。わたしはこれ迄見聞した世上の事件の中で、この折程云うに云われない厭な心持のした事はなかった。わたしは文学者たる以上この思想問題について黙していてはならない。