Clásicos japoneses con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lee ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 132.905 caracteres · 262 pantallas
まともに見ていられぬ光景だ。そして腹わたを探って「い」(胆嚢)を取り出す。青紫ばんだ、小粒の隠元豆のような、べろりとした塊りだ。これは大へんな薬として珍重され、とくに眼にいいというのだが、助七がそれを掌らにのせて、サァ……と勧めてくれた時には、私は、無気味な色と匂いに、生ま唾をのんで、首を横に振った。では……と彼は無雑作にペロリそれを嘗めてしまう。「い」はそんな風に大切にするが、肉はうまいといっても、助七など、杖に引っかけてポンと抛りすてていた。餌を呑んでいる奴は、「いが無い」からだめだそうだ。
蝮のいるのを知らずに通ると、蝮は「眼の無い奴だ」と笑うそうな。――蝮は、見たら殺さにゃならねぇチャ、彼はそう言っていたが、やはり……もっともだと思う。誤って踏みつけなどして、かまれる者が、ここらでも年にかなりの数にのぼるそうだ。蝮はあまり高い所にはいないようだが、私の見た中では、南越の頂上――約千七百メートルが、一番高かったろう。アゾで草が茂っている、ことに雨上がりのそんな処では、ちょっと先頭に立つのは躊躇される。それに、絶壁伝いと反対に、足袋の底の破れているのは気持ちがよくない。