Clásicos japoneses con furigana
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あるひのけいけん
ある日の経験
寺田 寅彦
Lee ある日の経験 (あるひのけいけん) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 4946 caracteres · 10 pantallas
その内の一つを取り下ろして値段をきいてみると六円だという。骨董品というほどでなくても、三越等の陳列棚で見る新出来の品などから比較して考えてみても、六円というのはおそらく多くの蒐集者にとっては安いかもしれない。しかし私はなんだか自分などの手に触るべからざる贅沢なものに触れたような気がしたので、急いでもとの棚へ返した。
その下の棚に青い釉薬のかかった、極めて粗製らしい壷が二つ三つ塵に埋れてころがっているのを拾い上げて見た。実に粗末なものではあるが、しかし釉の色が何となく美しく好もしいので試しに値を聞くと五拾銭だという。それでは一つ貰いましょうと云って、財布を取り出すために壷を一度棚に返そうとする時に、どうした拍子か誤ってその壷を取り落した。下には磁器の堅いものがゴタゴタ並んでいたので、元来脆いこの壷の口の処が少しばかり欠けてしまった。私は驚いて「どうもとんだ粗相をしました」と云うと、主人は、「いや、どう致しまして、一体この置き所も悪いものですから」と云った。そして、「このつれならまだいくらでもありますから、どうぞいいのを御持ち下さい」という。
一体私がこの壷を買う事に決定してから取り落してこわしたのだから、別に私の方であやまる必要もなければ、主人も黙って破片を渡せばいいのではなかったかと、今になってみると考え