Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

Lee いしが奢る (いしがおごる) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.304 caracteres · 45 pantallas

Aozora Bunko

保馬は片手に扇子を持って、跼んだまま水を眺めていた、娘の来たことにはまったく気がつかなかった。娘は笑いたいのをけんめいに堪えながら、そっと保馬のそばへ近寄るなり、「わっ」と叫んで背中を叩いた。おどかすつもりだったのだろうが、足もとが慥かでなかった、背中を叩いた手に力がはいり過ぎて、あっと云ったが、まにあわなかった。前のめりになる保馬を止めようとして、絡みあったまま、水の中へと転げ落ちてしまった。

保馬はすぐ起きあがった。水は腰までしかなかったが、さかさまに落込んだので頭からずぶ濡れになった。驚くよりもわけがわからず、どなりつけようとする眼の前へ、これも水浸しになった娘が起きあがった。そうして、顔へ垂れてくる水を両手で拭きながら、さも可笑しそうに声をあげて笑いだした。

「やりそこなっちゃったわ」と笑いながら云った、「もう少しで心中するところだったわねえ」

しかし娘は眼をまるくした。相手をまちがえたらしい、あらと云って口をあけた。保馬は黙っていた。娘はおろおろし、べそをかいて、濡れている保馬のほうへ手を伸ばし、帷子の袂のところを撫でた。

「済みません、堪忍して下さい、人違いなんです。