Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lee おせん de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 74.074 caracteres · 148 pantallas

Aozora Bunko

ぱっと、漆盆の上へ欝金の絵の具を垂らしたように、あたりが明るくなった。同時に、春重のニヤリと笑った薄気味悪い顔が、こっちを向いて立っていた。

「松つぁん。おめえ本当に、女の匂は、麝香の匂だと思ってるんだの」

「そりゃァそうだ。こんな生皮のような匂が女の匂でたまるもんか」

「そうか。じゃァよくわかるように、こいつを見せてやる」

編めば牛蒡締くらいの太さはあるであろう。春重の手から、無造作に投げ出された真ッ黒な一束は、松五郎の膝の下で、蛇のようにひとうねりうねると、ぐさりとそのまま畳の上へ、とぐろを巻いて納まってしまった。

「あッ」

「気味の悪いもんじゃねえよ。よく手に取って、その匂を嗅いで見ねえ」

松五郎は行燈の下に、じっと眼を瞠った。

「これァ重さん、髪の毛じゃねえか」

「その通りだ」

「こんなものを、おめえ。……」

「ふふふ、気味が悪いか。情ねえ料簡だの、爪の匂がいやだというから、そいつを嗅がせてやるんだが、これだって、髢なんぞたわけが違って、滅多矢鱈に集まる代物じゃァねえんだ。数にしたら何万本。しかも一本ずつがみんな違った、若い女の髪の毛だ。――その中へ黙って顔を埋めて見ねえ。