Clásicos japoneses con furigana
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おばなさわ
おばな沢
山本 周五郎
Lee おばな沢 (おばなさわ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.479 caracteres · 45 pantallas
節子はぽっと赤くなり、幻の人をやさしく睨む。
「――いつかあんなことをなすって、いけない方ね、わたくし一日じゅう、お母さまのお顔が見られませんでしたわ」
片手でそっと唇を撫で、眼をつむって、うっとりと節子は囁くのであった。
「――たったいちど、一生のうちのたったいちど、……節子は死ぬまで忘れませんわ、あなた、持仏堂が出来たら、わたくし一生そこで、あなたのお位牌を守ってくらしますの、……仏と尼の結婚、これも楽しくはございませんかしら」
節子が結婚できない躯だということで、誰よりも父の三郎左衛門がふびんに思ったらしい。彼女の頼みはそのままいれられて、雪が消えるとすぐ工事にかかった。加賀のほうから伊与四郎という番匠を呼んだが、ひどく丹念な職人で、日数が倍ちかくもかかり、出来あがったのは十月の中旬であった。
かたちばかりであるが、菩提寺から僧を招いて落慶供養をすることになり、節子は相良桂一郎を招待した。
持仏堂は広庭の南の隅に寄って建てられた。そこは芝生の小高い丘のようになっていて、うしろは松と櫟の林に囲まれ、前に立つと密生した松林のかなたに、泉水のある広庭の一部と母屋の屋根が見える。