Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lee さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 210.521 caracteres · 415 pantallas
「ふ、岡安さんにかぶれたか」彼は暫く考えてから苦笑し、けれどもすぐに首を振った、「――そうじゃあない、岡安さんにかぶれたんじゃあない、こいつはおれの心の中で生れたんだ、これは大事なことなんだ」
あと片づけをして戻って来た与平が、掻巻でも掛けようかと云ったが、栄二はそれには及ばないと答えた。与平はしいてとは云わず、まもなく外へ出ていった。
「いや、よそう」暫くして栄二は、頭にうかんだ考えをふりはらった、「綿文のことはよしだ、あのことは当分のあいだ忘れているとしよう」
だが一つだけ。一枚の金襴の切で、自分の一生がめちゃめちゃになった、という考えかたが間違いだった、ということだけは認めなければならない。人間の一生は、一枚の金襴の切などでめちゃめちゃにされてはならないからだ、と彼は自分に云った。
「ふしぎなことだが、七月のあらしのさいちゅう、こんなことでは死なねえと思いながら、自分がいま生きているということをはっきりと感じた」と栄二はまた呟いた、「――崩れた石垣の下に敷かれ、砂混りの塩水を飲みながら、苦しさのあまりいっそ死んだほうがましだと思ったときも、自分が現に生きているということを、まざまざと感じたものだ」