Clásicos japoneses con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lee つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 74.725 caracteres · 148 pantallas
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蕎麦屋を出てから自動車に乗ったのは瑠璃子、春代、君江の三人であった。瑠璃子が赤阪一ツ木で先に降り、次に春代が四谷左門町で降りると、運転手は予め行先を教えられているので、塩町の電車通から曲って津の守阪を降りかけた。小雨のふり出した深夜のことで人通はない。君江は酔っているので、一人になると急に眠くなって覚えず瞼を合せたかと思うと、突然君子さんと呼ぶ男の声。びっくりして気がつくと自分を呼んだのは見も知らぬ運転手である。いやな奴だと思いながら、大方女給同士の話から聞知って冗談を言うのだろうと、気にも留めず、「もう本村町なの。」
運転手はゆるゆる車を進めながら、「初めから君子さんにちがいないと思っていたんですよ。忘れましたか。諏訪町の加藤さんで二、三度お逢いしました。」と鳥打帽をとり振返って顔を見せた。
諏訪町の加藤というのは今富士見町に出ている京葉の事なので、君江はそこで知っているというからには二度や三度出たお客にちがいないと思いながら、その顔はとうに忘れ果てて思い出せない。日頃君江はカッフェーの人中で、もしその時分のお客と顔を見合せた場合、自分の取るべき態度については予め考えていないことはなかった。