Clásicos japoneses con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lee つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 74.725 caracteres · 148 pantallas
金には決して不自由していないのに、机も衣桁もなく、電気の笠もかけたままで、いつまでたっても、今方引越して来たばかりだという体裁である。君江は年頃の女のように、窓に草花の鉢を置いたり、箪笥の上に人形や玩具を飾り立てたり、壁に絵葉書を貼ったりするような趣味は全然持っていない。とにかく一風変った妙な女だと清岡は早くから心付いていた。
「お茶はいらない。もうそろそろ出掛ける時分だろう。」と清岡は窓から座布団と共に腰をすべらせて畳の上に胡坐をかき、「僕もこれから新宿の駅まで用事があるんだよ。それでちょいと寄って見たんだ。」
「そう。でも、お茶だけ入れましょうよ。おばさん。お湯がわいているなら頂戴。」と叫びながら下へ降り、すぐに瀬戸引の薬鑵を提げて来た。
「昨日、お前、占を見てもらいに行ったんだってね。『街巷新聞』に出た黒子の一件は、誰がいたずらをしたのか当がついたか。」
「いいえ。当も何もつかないわ。」と君江は久須の茶を湯呑につぎながら、「初めは、いろいろな事をきいて見ようと思って出かけて見たんだけれど、何だか気まりがわるいから止してしまったのよ。だけれど、考えるとほんとに不思議ねえ。