Clásicos japoneses con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lee つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 74.725 caracteres · 148 pantallas
それと共にこのまま何事をも知らぬ顔に済してしまうのは、あまり言甲斐がなさ過る。面責した上、女の口から事実を白状させてあやまらせねば、どうも気がすまない。しかしまた更に思直して見ると、君江は見掛けに似ず並大抵の女でない。問われるままに案外無造作に白状してしまうかも知れない。それと共に自分の遊び足りない事と嫉妬を起した事などを心窃に冷笑しないとも限らない。これは男の身に取っては浮気をされたよりも、なお更忍びがたい侮辱である。清岡は黙殺するのも無念だし、表面は謝罪って、蔭で舌を出されるのはなお更口惜しいと、さまざま思案した末、やはり何事をも知らぬ振りで表面は今まで通り、あくまで馬鹿にされながら、その代りいつか時節を待って、痛烈な復讐をしてやるに若くはないと決心した。
清岡は多年原稿生活を営む必要上、腹心の男を二人使っている。一人は村岡といって、早稲田あたりを卒業したばかりの文士で、毎月百円内外の手当を貰い、清岡の口述する小説を筆記して原稿を製作すると、それを駒田という五十年輩の男が新聞社や雑誌社へ売込みに行く。駒田は多年或新聞社の会計部に雇われていたので、原稿料の相場にも明くまた記者仲間にも知己が多いので、清岡の受取るべき稿料の二割を自分の所得にする約束で働いているのである。