Clásicos japoneses con furigana
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ヘヤーピンいっぽん
ヘヤーピン一本
豊島 与志雄
Lee ヘヤーピン一本 (ヘヤーピンいっぽん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 8246 caracteres · 17 pantallas
そのお礼だと言う。
それならば、別に拒むこともないので、俺は鮭缶を受取り、その中に遠慮なく箸をつっ込んだ。娘の方では、パンの包みを取り出して、味噌汁を飲みながら食べはじめた。
ぽつりぽつり、話をした。自然と、俺の方から物を尋ねることになり、娘はそれに答えるだけで、何も尋ねかけてはこなかった。打ち解けたのでもなく、俺が好奇心を起したのでもなく、黙っているのがへんだから口を利いたに過ぎない。だが、それによって、娘の身の上がだいたい分った。
終戦後しばらくたって、彼女は大連から引き揚げてきた。そして九州のF市で、親戚の家に働いている。ところが、このO市に、彼女が嘗て母親のように世話になった伯母さんが、再婚して住んでいる。その伯母さんの消息が、戦争中の空襲以来、分らなくなってしまった。手紙を出しても、居所不明で戻ってくる。或は亡くなったのかも知れない。それで彼女は、はっきりしたことが知りたく、自分でやって来た。せめて、伯母さんの家の焼け跡でも見たかった。あれからもう一年半ばかりたっていて、まるで夢のような話だ。どうして彼女一人でやって来たのか、そのへんのところは、ぼやけて分らない。