Clásicos japoneses con furigana
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いっけいわだい
一景話題
泉 鏡花
Lee 一景話題 (いっけいわだい) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 4673 caracteres · 10 pantallas
三年の祥月命日の真夜中とぞ。雨強く風烈しく、戸を揺り垣を動かす、物凄じく暴るる夜なりしが、ずどんと音して、風の中より屋の棟に下立つものあり。ばたりと煽って自から上に吹開く、引窓の板を片手に擡げて、倒に内を覗き、おくの、おくのとて、若き妻の名を呼ぶ。その人、面青く、髯赤し。下に寝ねたるその妻、さばかりの吹降りながら折からの蒸暑さに、いぎたなくて、掻巻を乗出でたる白き胸に、暖き息、上よりかかりて、曰く、汝の夫なり。魔道に赴きたれば、今は帰らず。されど、小児等も不便なり、活計の術を教うるなりとて、すなわち餡の製法を伝えつ。今はこれまでぞと云うままに、頸を入れてまた差覗くや、たちまち、黒雲を捲き小さくなりて空高く舞上る。傘の飛ぶがごとし。天赤かりしとや。天狗相伝の餅というものこれなり。
いつぞやらん、その松任より、源平島、水島、手取川を越えて、山に入る、辰口という小さな温泉に行きて帰るさ、件の茶屋に憩いて、児心に、ふと見たる、帳場にはあらず、奥の別なる小さき部屋に、黒髪の乱れたる、若き、色の白き、痩せたる女、差俯向きて床の上に起直りていたり。枕許に薬などあり、病人なりしなるべし。