Clásicos japoneses con furigana
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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
Lee 三界万霊塔 (さんがいばんれいとう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 19.716 caracteres · 39 pantallas
「これは家の躾でネ。往来なかで卒中でぶッくらけえるにしても、和服じゃ態が悪かろうというんだがネ。ぶッくらけえったら、ざまも体裁もあるもんか。見るほうが損をするだけのことだ。馬鹿な」
戸田は鯨のような小さな眼をショボショボさせながら籐椅子の肱を打ったが、見当がはずれて拳は膝の上へ落ちた。首が顫え、たるんだ下唇に過去の悪因縁のマラリヤのあとが煤黒く残っている。襟巻をした弱々しい小柄な老人の顔を見ていると、これがあの無法者の戸田かと訝かられた。
「このごろはよくむかしのことを思いだす。よくあばれたからネ。海の底へ三界万霊塔を据えつけたなんてえのは、おれたちぐらいのもんだろう」
「なにをいいだすつもりなんだ」
「まあ、これを見てくれということさ」
戸田が上着の胸裏を返してみせた。二寸ほどの幅の白い布を縫いつけ、住所と名が楷書で書きつけてあった。
「なんだい、それは」
「これは迷子札よ。いつどこでぶッくらけえっても、死骸だけはジープにも轢かれずに戻って来るようにというわけ。人間もこうなっちゃおしまいだ。おい、なにか出さないか」
深尾は隅棚からハート形の黒い罎とタンブラーを出して卓の上においた。