Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lee 似而非物語 (えせものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 31.817 caracteres · 64 pantallas

Aozora Bunko

もちろん煙草を吸うこともできない、腰を揉ませながら水洟をかんで、その紙をまるめて庭へぽんと投げた。横になったまま投げたのであるが、ちょうどそのとき、五之木五郎が水手桶を担いで通りかかっていて、その横面へ杢助の投げた紙だまが当った。

五之木は谷から水を汲んで来たところであった。水の入った二つの手桶を、天秤棒の前後に掛けて、庭を横切ろうとしていたのである。が、紙だまが左の頬に当った刹那、彼は雷にでも撃たれたように、全身をぎくりと硬ばらせて立竦んだ。

「あれいけねえ、それゃいけねえ」

杢助はわれ知らずそう云った。しまったと思ったのであろう、けれどもおそかった。五之木は水手桶を下におろし、そこへ土下座をした。そして右手を前に出して、いつものように食指を一本ぬっと立ててみせ、それから激しく吃った。

「お、お、お、い、い、い」

感激のあまり吃りが昂進したらしかった。無意味な母音が出るばかりで、どうしても言葉にならなかった。彼はますます指を押立て、これが証拠だとでもいうように、ただもう怪鳥のような叫び声をあげるのであった。

「わかっただよ」

杢助はうんざりしたように云った。