Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lee 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 160.664 caracteres · 323 pantallas

Aozora Bunko

お附きの者は不審に思い、そっと襖を開けて見た。金一郎様は上半身を夜具の襟から抜け出させ、両手を虚空でしっかり握り、眼を白く剥いて死んでいた。

これは実に内藤家にとって容易ならない打撃であった。世継ぎの若君が変死したとあっては、上に対しても面伏せである。

「何者の所業! どうして殺したのか?」

「突き傷もなければ切り傷もない」

「血一滴こぼれてもいない」

「毒殺らしい徴候もない」

「絞殺らしい証拠もない」

「奇怪な殺人、疑問の死」

上屋敷でも下屋敷でも人々は不安そうに囁き合った。

葉之助は自宅の一室で、鼻紙の中の白い粉を、睨むように見詰めていたが、

「若君弑虐の大秘密は、この粉の中になければならない」こう口の中で呟いた。

「笛のような美妙な音! 不思議だな、全く不思議だ! 何者の音であったろう?」

一〇

信州伊那郡高遠の城下、三の曲輪町の中ほどに、天野北山の邸があったが、ある日、北山とその弟子の、前田一学とが話し合っていた。

「先生、不思議ではございませんか」こう云ったのは一学で、「突き傷も斬り傷もないそうで」

「うん」と北山は腕を組んだが、「毒殺の嫌疑もないのだそうだ」