Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lee 南国太平記 (なんごくたいへいき) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 493.291 caracteres · 991 pantallas

Aozora Bunko

(気の弱い――急に、ここへ来て二人のことを、こんなに思い出すなど――不覚だ――何を二人のために憐むのか? 父が、お為派なら、わしは、或いは、人の刃にかかって、死んでいるかもしれぬ。何方が善で、何方が悪か、誰が判る? 所詮は、武士というものの辛さだ)

そう思う片方から

(わしは然し、一旦脱走して、帰参を許されたものの、それは、許されて元々だ。綱手を失っただけが損だ)

とも、考えた。そして、暫く、俯向いて、腕組をしていたが

(そうだ、あの鏡――)

と、思った。そして、小さい、旅行李を出して、蓋をとった。その中には、懐中薬だの、折本の、道中細見、手帳、守り札、着換え、というようなものが、入っていた。そして、その底に、印籠の側に、薄い絹でくるんだ、綱手の形見の鏡が、入っていた。

薄い絹は、少し、黒くなっていた。それは、鏡をしまっていた懐へ流れ込んできた綱手の血に、染まったところであった。

月丸は、鏡を手にとって、自分の顔を、写してみた。そして、じっと、睨みつけていたが、ふっと

(もしかしたなら、父が――父も、叡山へ、来てはいないであろうか)

と、思った。父に似た自分の顔に、父に似た曇りと、疲れとの出ているのを、月丸は、感じた。