Clásicos japoneses con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lee 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.286 caracteres · 301 pantallas
侍臣達はみんな不思議に思った。名に負う将軍家斉公ときては、風流人としての通り者であった。どんなはやり唄がはやろうと、気にかけるようなお方ではない。ところがそれを気にかけるのであった。
「珍らしいことだ。不思議だな」こう思わざるを得なかった。
ある日お気に入りの中野碩翁が、ご機嫌うかがいに伺候した。
「おお播磨か、機嫌はどうだな」将軍の方から機嫌をきいた。
「変ったこともございませんな」
碩翁の方でも友人づきあいであった。
この二人の仲のよさは、当時有名なものであった。というのも碩翁の養女が、将軍晩年の愛妾だからで、もっとも碩翁その人も一個変った人物ではあった。才智があって大胆で、直言をして憚らない。そうして非常な風流人で、六芸十能に達していた。だから家斉とはうまがあった。で二人の関係は主従というよりも友達であった。
身分は九千石の旗本で、たいしたものではなかったが、その権勢に至っては、老中も若年寄もクソを喰らえで、まして諸藩の大名など、その眼中になかったものである。
したがって随分わがままもした。市井の無頼漢を贔屓にしたり、諸芸人を近づけたりした。いわゆる一種の時代の子で、形を変えた大久保彦左衛門、まずそういった人物であった。