Clásicos japoneses con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lee 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.286 caracteres · 301 pantallas
女房は門の戸を閉じようともしない。
遠くで追分が聞こえていた。
今の雪風に煽られたのか、炉の埋み火が燃え上がった。
サラサラと落ちる雪の音。……
「身を苦しめるが罪障消滅。……もうあの人は帰って来まい。……ああまた追分が聞こえて来る」
耳を澄まし眼を据えた。
木立ちに風があたっていた。
どこぞに遠火事でもあると見えて、ひとつばんが鳴っていた。カーンと一つ聞こえて来ては、そのまましんと静まり返り、ややあってまたもカーンと鳴った。
女房はヨロヨロと立ち上がった。
そうして部屋の中を廻り出した。
「お前に習った信濃追分、お前が唄うなら妾も唄う。……『信州追分桝形の茶屋で』……妾が悪うございました。どうぞかんにんしてくださいまし。……『ほろりと泣いたが忘らりょか』……妾が悪うございました。そんなに怨んでくださいますな。……おおおおだんだん近寄って来る!」
振り乱した髪、もつれた裳、肋の露出したあお白い胸。……懊悩地獄の亡者であった。
手を泳がせ、裾を蹴り、唄いながら女房は部屋を廻った。
富士甚内とお北との生活。……
鋭利をきわめた五寸釘の手裏剣
「あッあッあッ、あッあッあッ」