Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
るそんのつぼ
呂宋の壺
久生 十蘭
Lee 呂宋の壺 (るそんのつぼ) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 18.375 caracteres · 36 pantallas
二十日の午後、俄雨があった。
難船してから、はじめての雨だった。吉之丞はあおのけに寝て、掌で受けをこしらえ、鼻のわきを流れるのも、顎から飛沫くのもいっしょくたに飲みこんだ。死んだとばかし思っていた、まわりのマレー人や安南人が、狂人のようにはね起き、空を仰いで飽くほど雨を飲んでいる。
モニカは雨水を帛に浸ませて菊丸の口の中へ絞りこみ、どこかに生きているしるしがないかと、じっと顔をながめていたが、もう生きかえる宛がないことがわかると、急にキッパリとした顔つきになり、菊丸の死体をひきずって行って、なんの未練もなく海へ捨てた。
雨は一時間ほどで降りやみ、眼眩くような天気になった。ふと見ると、帆柱の蔭になるところで、マレー人が片肱を立てて壺から水を飲んでいる。
「ほう」
雨があがれば、つぎの雨を待つしかないが、壺があれば、溢れるほど雨水をためて、好きなときに飲むことができる。それにしても、あの混雑のなかで、壺を抱えだすというのは抜目のないやつだと、マレー人のすることをながめているうちに、なんともつかぬ感動に身のうちを貫かれ、われともなくマレー人のそばへ這い寄った。