Clásicos japoneses con furigana
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ほうおんき
報恩記
Lee 報恩記 (ほうおんき) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 14.803 caracteres · 30 pantallas
第一こう云う大雪の夜に、庭先へ誰か坊主が来ている、――それが不思議ではありませんか? わたしはしばらく思案した後、たとい危い芸当にしても、とにかくもう一度茶室の外へ、忍び寄る事に決心しました。
それから一時ばかりたった頃です。あの怪しい行脚の坊主は、ちょうど雪の止んだのを幸い、小川通りを下って行きました。これが阿媽港甚内なのです。侍、連歌師、町人、虚無僧、――何にでも姿を変えると云う、洛中に名高い盗人なのです。わたしは後から見え隠れに甚内の跡をつけて行きました。その時ほど妙に嬉しかった事は、一度もなかったのに違いありません。阿媽港甚内! 阿媽港甚内! わたしはどのくらい夢の中にも、あの男の姿を慕っていたでしょう。殺生関白の太刀を盗んだのも甚内です。沙室屋の珊瑚樹を詐ったのも甚内です。備前宰相の伽羅を切ったのも、甲比丹「ぺれいら」の時計を奪ったのも、一夜に五つの土蔵を破ったのも、八人の参河侍を斬り倒したのも、――そのほか末代にも伝わるような、稀有の悪事を働いたのは、いつでも阿媽港甚内です。その甚内は今わたしの前に、網代の笠を傾けながら、薄明るい雪路を歩いている。