Clásicos japoneses con furigana
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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
Lee 夏草戦記 (なつくさせんき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 21.107 caracteres · 41 pantallas
……なんのために官兵衛のあとを跟けるか、かれはあらためて自分にたしかめる要はなかった、たとえ相手が誰であろうともこんな時刻に宿所をはなれるのは不審である、それだけでかれは自分のとるべき態度をきめた、そのことの結果がどうなるかは問題ではない、全隊士のために「内通者をつきとめる」ただそれだけでよいのだ、そのほかのことは八幡、どうあろうとも神のしろしめすままである。
ひたひたと、湿った土を踏む足音が近づいて来た、坂道の片がわに楢の並木がつづいている、ときどきがんどう提燈の光がちらちらと樹の間に動いた、足音は新九郎の正面をとおって右へゆく、並木の出はずれた道は、すぐにみっしり枝葉をさし交わした藪のなかへはいる、足音がその藪のなかへ消えてゆくのを待って、新九郎は桑畑からそっとぬけだした。そして道へあがって藪の入りくちまでいったが、すぐにうしろへさっと身をひいた、闇のなかのついそこで人のけはいが感じられたのだ、かれは道の脇へひそんでじっと耳をすました、息詰まるような瞬間だった、暗がりで人の姿はまったく見えないが、ひと言ふた言なにやら囁きあうのが微かに聞えた、そしてすぐに足音の一つは向うへ去り、一つはこちらへ戻って来る、新九郎は身を跼めてそれをやり過した。